〜だれでもホームへ遊びにおいで〜
高橋健一(当時生活相談員)
老人ホームに人形劇団ができると、なんで新聞やテレビが取材にくるほど珍しい事になるのでしょう。
陶芸の指導をしてくれている加山哲也さんが、ホームに持ち込んでくれた人形劇は〔ホームは老人福祉に関係のない事もできる所〕〔老人福祉に関係ない人も自由に来れる所〕という、あたりまえの事を提案してくれました。
〔老人ホームは老人福祉をする所〕それは施設の社会に対する役割です。
ところがホームに暮らす老人にとっては、ホームは〔家〕なのです。
家はいろんな事ができる所です。
ホームで人形劇をやっていると言うと「老人は劇に、どう関わるんですか」とよく聞かれます。
「劇の中では老人は何にもしません」と答えると不思議な顔をされます。
老人福祉という物差しで老人の暮しを評価していると〔老人のためになる〕〔リハビリになる〕〔生き甲斐になる〕というような名目が無い事に対しては、ホームの中では無駄な事、してはならない悪い事のように思えてきてしまいます。
しかし私達の暮しは、いちいち名目など無く、したい事も違います。
ホームに訪れる人達も、福祉に関係する人や、ボランティアさんだけでなくても良いはずです。
人形劇だけがしたくてホームに遊びに来る。そんな人がいても、本当は良いわけです。
「慰問」という言葉があります。
恵まれない人を訪ねて慰める事です。
子供がホームに慰問に来てくれて、老人の前で昔の歌を歌うというのが今までのパターンでした。
その場で老人は喜びますが、子供にとっては、あまりおもしろくありません。そのうえ「騒いだらだめです。ここに並んで歌いなさい」とやられたら、子供は「ホームって窮屈な所だな」と感じるでしょう。
知人の家を訪ねるとき「慰問に行ってくる」と出かける人はいません。「遊びに行ってくる」わけです。
子供も、ホームに遊びに来てくれれば良いのです。なにも無理に老人に何かをすることはないのです。
ホームの中で自由に遊んで、そこで気の会いそうな老人がいたら、一緒に遊べばいいわけです。
ひ孫を連れた家族のかたも、ホームへの訪問を子供からせがまられるぐらい魅力的なホームを。
近所の親子連れのみなさんも気楽に遊びにきてくれれば、などなど。 十年目からのスタートは、ホームの中に子供の遊び場作りをもくろんでいます。
砂場やすべり台など、予算など何のめどもありませんが、みんなであれこれアイデアを出し合ってつくりませんか。
いっしょに、楽しい家づくりをしていきましょうよ。