大きい文字版はこちらです

EnglishVersionが作れない負い目から「大きい文字版」を思いつきました。高齢者情報発信ページはこんな配慮を広めましょう(この世界のことだからこんな配慮もう誰かがやってることでしょうけど)

 また、ブラウザによってはフォントサイズを調整できます。
Microsoft Internet Explorer は簡単ですね。
 Netscape Navigator2.0では、オプション→全般の設定→フォント→サイズで変えるのですが、面倒ですね。ただ、字が小さくてお困りの方はチャレンジの価値はあります。


 長文ですので、お読みの際はネットワーク資源の有効活用のため、電話をいったんお切りいただくか、保存してからお読みいただいたほうがよいと思います。


インターネットは政府が動いてやったことでもなければ、一部の大企業が始めたことでもない。通信上の共通の決まりごとを守っていれば、誰でも接続できる。誰が参加しても誰もだめだとはいわない。それどころか、接続する人間が増えれば知識や情報の流通が活発になる。つなぐと決心した人には、目の前に道がある。いや誰にでも道がつくれる。

<村井 純 インターネット宣言(講談社)より>


4月21日のボランティアミーティング
Win95機でHTMファイルを作成中
(借りたデジタルカメラで撮影)
 

 96年3月31日の、第1回ボランティアミーティングに参加されたボランティアさんからいただいた意見の中に、私の呼びかけに具体的展望が見えない、という主旨のご質問をいただきました。
 当日は限られた時間の中で充分な説明もできませんでしたので、今までの経過も交えて私の考えを取り急ぎ説明させていただきます。ほとんど推敲していないので、日々手直ししたものを掲載していきます。(乱文の言い訳デス)
 それにしても、自分の思いを時間も字数も制約なしに自由に表現できるインターネットって、ほんとうにすごいですね!


高齢福祉の現場における

インターネット活用の可能性について


ずいぶん堅苦しいタイトルですが、たまにはマジメに。

(1996.6.12.更新 カトレアホーム 高橋健一)


1、はじめに(経過)

 カトレアホームがインターネットに接続することになったのは、ホームに在住する93才の女性が「私もインターネットをしてみたい」と語った事がきっかけでした。昨年(95年)秋のことです。
 カトレアホームは、「みんなの願い」ではなく、「一人の願いをかなえることを積み重ねていく」(*1)ことを理想としています。
 これは既存の福祉常識が持つ画一的処遇からの反省をふまえ提唱された援助姿勢です。
 前例がなくても、老人らしい願いでなくても、願い事の内容分野に関して得意な職員が担当して、できるだけの援助をすることが理想です。
 インターネットについては、10年ほど前にパソコンに挫折した経験のある私が時折しもWin95ブームということもあり再挑戦を兼ねて担当することになりました。
 しかし、実際にインターネットへ接続しようとすると、けっこう面倒な手間がかかりました。まず肝心なパソコンがありません。
 法人会計、施設会計、給料計算、在住者(ホーム入居老人)台帳に使用しているNECの98は、私が下手にいじると法人経営の根幹を揺るがす壊滅的事態を引き起こしかねません(笑)。
 だからといって教養娯楽費の範囲ではパソコンはかなり高価な買い物となります。機材を揃えるにも一苦労です。
 そんなおり昨年(95年)クリスマスに、ちょうどパソコン一台が買えるような金額の寄付の申し出があったのです。
 職員会議で相談し、寄付申し出者にも承諾をいただき、Macintosh Performa5220を購入させてもらうことになりました。(Win95ブームのさなかでしたが操作性を考えてあえて Macintoshにしました)
 その後、今後の施設経営に活用したいという理由で法人理事長が思いきった寄付をしてくれたために、いまは17インチの富士通FMV-SE(Win95機)やMOがきて随分贅沢な環境になりました。
 また、茅ヶ崎市内に障害者、高齢者割引を料金体系に盛り込んだユニークなプロバイダーがあることを知り、その会社の社長さんからインターネットの展望について、じっくり話しをうかがう機会を持つことができました。ここで接続に関する好意的な協力を得ることができ、96年の1月末にはインターネットに接続する事ができたのです。(カトレアホームページはその後、2月22日にオープンしました)

 あれこれ考えあぐねるよりも、うごきだすと状況は変わってくるものです。

2、実際に接続してみて感じたこと

 近所付き合い

 ただテレビを見るようにインターネットを検索するのも充分楽しいものですが、私が操作を練習しながら気づいたのは、この双方向環境を利用して何か新しいかたちの「近所付き合い」ができないだろうかということでした。
 カトレアホームは、50人の在住者中8割以上の方が、何らかの高齢期知的障害(老人性痴呆症)の状態の方々です。
 インターネットがホームに在住する高齢者全員で活用できる道具ではないことは明白でした。
 しかし、一人でも希望者がおられることと、入所型施設の持つ自己完結性や閉鎖性の壁を自覚するものとして、様々なコミュニケーション手段の活用は施設介護上でも優先されるべき課題であると考えました。
 パソコンの操作は、もともと高齢者にはむずかしいと言われていましたし、職員が補助するといっても、私を含めた職員自身の知識も伴わない未知の世界でした。
 しばらくインターネットの中を見て歩くうちに、インターネット上には高度な技術を持った人たちが大勢点在する事を知りました。
 また、障害者が楽に操作できるような様々な入力技術の工夫が試行錯誤されていることも知りました。(*2)
 しかしその反面、ブームでパソコンは買ったけれども、ブームのインターネットは始めたたけれど、「ではその先何をしようか?」というところで行き詰まってしまう。そんなホームページに再三出会わす事がありました。
 またインターネットは「見るだけなら半年で飽きるだろう」という意見も聞きました。

 ボランティア

 また、その一方に、インターネット上で、社会貢献をしたいけれどその方法がわからないと感じるホームページにも出会いました。
 阪神淡路の大震災でも見えてきたように、社会貢献を望む人たちはたくさんいるのに、それを結びつけることができないという今の日本の社会的課題があります。
 じつはこれは、社会福祉分野の重要な研究課題なのです。
 その点でもインターネットの普及は、社会貢献の「思い」を結ぶ有効な架け橋になりえるのではないかと思ったのです。
 お年寄りがインターネット情報を見れる環境を整えるだけではなく、高齢者福祉の拠点施設である特別養護老人ホームが、様々な情報を発信し、人的にも制度的にも多方面の社会資源を結び付けていく事ができないだろうか。そんな思いがふつふつと湧いてきました。

3、ホームページ作成ボランティア募集の理由と展望

 抱え込まない姿勢

 自分自身の力量のなさが一番の理由なのですが、ホームページ作成の技術的限界を感じた中で思いついたのが、カトレアホームのホームページを作ってくれるボランティアの募集でした。在野に点在するパソコン専門家(マニア)の力を活用させてもらえないか、ということです。
 私は福祉の実践人ですから、生涯学習などの社会教育的分野はよくわかりません。しかし、要介護人口の増加が確実な高齢社会を背景としたこれからの地域社会において、住民自治の創造的活性化のためには、福祉をフィールドにしておこなわれる日常生活のニーズに根ざした社会教育の展開が重要になってくると思うのです。
 その時、住民個々の固有のニーズを発信し、かつ繋げていくための道具として、インターネットは大きな可能性を持っていると感じたのです。
 これからの地域福祉は、介護サービスだけを提供していればよいのではなく、社会教育の分野などとも協力して地域福祉をそこに住む人々とともに創造していく役割が求められていると思うのです。

 身の丈の感覚

 かねてからの私の夢は、その地域に住む人々が、自分自身の日常の生活実感からの発想をもとに「身の丈の感覚」とでも言うべき視点から、自分たちの手で自分たちの福祉サービスを作っていきたいと思っていました。
 ここで大切なのは、市民自らが福祉サービスをつくっていくためには、その地域に住む人々が何らかの形で実際の地域の福祉サービスと関わるきっかけが不可欠だということです。
 この具体的福祉サービスとの出会いのきっかけづくりにも、インターネットは面白い役割を果たしてくれると思うのです。

 高齢社会を遊んじゃおう

 たとえば、何の用もないのにいきなりカトレアホームを訪ねてくる人はいません。しかしパソコンサポートボランティアの呼びかけをしたら、たくさんの方々がカトレアホームを訪ねてきてくれました。
 以前からよく、子どもや学生は高齢者と交流するべきだと言われてきました。しかし、ただ「老人と話しましょう」などという慰問感覚のボランティア活動は、形だけで滑稽な単発的行事になりがちです。もっと自然なかたちで、いっしょに「遊ぶ」ことはできないでしょうか。「じいちゃんばーちゃんとインターネットで遊ぼう!」というような感覚で、交流のきっかけができたら素敵ではありませんか。
 98年10月にカトレアホームが運営を予定している地域単独型のデイケアセンター、在宅支援センターのボランティアルームには、インターネットカフェを開設したいと願っています。
 ホームページ作成ボランティアについても同様に、高齢者もボランティアもともに楽しみながらホームページをつくり、相互の交流を深めていける。そんな環境がつくれたらと思っています。
 「長寿」は有史以来の人類の夢であったはずです。なのに今日の「高齢社会」のイメージはなぜこんなにも否定的で、お年寄りを社会のお荷物としてしか捉えられないのでしょうか。
 高齢社会をよろこんで迎え、物よりも心の豊かさを求める社会を創るきっかけとして肯定的に捉えることはできないのでしょうか?
 高齢社会を遊んじゃおう!
 「遊び」は古代神聖な営みでした。インターネットで遊びながら、このテーマを深めていきたいと思います。

4、ボランティア活動展開の基本姿勢


 上記の展望にそって、カトレアホームでインターネットを活用していくには、ホームページの運用そのものが、地域住民(ボランティア)の手によって支えられるものにしていきたいと考えました。
 そこで、この活動で大切にしていきたい原則を箇条書きにしてみることにしました。

(1)地域を創る「近所付き合い」関係を展開していくには、インターネット上だけの関係ではなく、会いたいときに会える環境を確保したい。(瞬時に地球の裏側の情報にアクセスできても、隣りに住む人の事が全然わからない社会でありたくない)

(2)ボランティアは、カトレアホームだけで抱え込むのではなく、広く自分たちの居住する湘南地域でその能力を発揮できる環境を整えたい。
 →茅ヶ崎市社会福祉協議会と連携

(3)在宅の障害のある人たちや、外出しにくい高齢者の人たちにとって、インターネットはその社会性の確保に重要な貢献を成し得る道具である。この観点からパソコン操作の技術支援体制(非営利・ボランティア)をつくりたい。

(4)2と3の支援のためにも茅ヶ崎市社会協議会に電子メールの受信体制の確保を強く要望するとともに、県や全国社会福祉協議会にも同様に整備を要望していきたい。

(5)ネットワーク環境の一定程度の普及がなければ、自分の住む小規模な地域内での活動に結びつきにくいので、インターネットに限らず、さまざまなメディアとの連携の可能性も探っていきたい。
 →カトレアホームから徒歩7分の文教大学、車で10分の慶応大学、テレビちがさき(茅ヶ崎市が多額の出資をした第三セクターCATV会社、光ケーブル仕様の最新設備を持つので市民福祉の分野でも活用しない手はない)近隣プロバイダー業者、有線放送、地域FM放送局等

(6)しかし、パソコンを操作できなければ何も発言できない状態をつくるわけではない。使いたいと思った人が使いたい時に気楽に使える環境をつくりたいだけ。

(7)ホームでの生活が社会に紹介され、施設が地域に理解されることは大切ではあるが、ホームの行事を写真で発表することなどについては慎重な姿勢でのぞみたい。
 利用者の私的日常生活やその写真を施設運営者側の思惑だけで公表していくことについて自主的に一定のガイドラインを設ける必要を感じている。
 今後、高齢者福祉の分野でもホームページ開設の動きが広がった場合、この点については充分な配慮が必要だということを喚起しつつすすめていきたい。

(8)ボランティア活動への参加は、できるだけ間口を広げ、「カトレアホームに遊びに来る人たち」という位置づけを持ちたい。(カトレアホームのマナーには従ってもらいますが)
 ボランティア個々の都合で、毎週でも、年に一度でも本人のペースで参加可能なものとしたい。
 支持待ちボランティアではなく、ボランティア個々に自分で自分のしたいことを見つけて欲しい。(そのための情報提供と環境整備はホーム側が行うので積極的に提言していただきたい)

(9)ボランティアの実名表記の原則。
 発言の個人責任の明確化と、開かれたボランティアグループにするためにも、ボランティアページ制作時などに実名表記を原則としたい。特定の愛称で呼び合うような閉鎖的仲間意識は、ここでの活動では避けたい。

(10)「ニュースかわら版」の遠方の人で、こんなボランティア活動に参加したいなあと思われた方へ に下記の原則を掲載した。
「このボランティアグループは、できるだけ湘南近辺の人達で、会いたいときに直接会えるボランティアグループにしていきたいと思っています。
 そんなわけで遠方の方は、どうぞみなさんのお住まいの地域で、同じようなボランティアグループを呼びかけてみて下さい。その地域地域で個性あるものになるはずですから。
 小さな点が広がって、日本の福祉の風通しが少しでもよくなるといいんだけどなあ。
PS
 でもね、遠方でも応援して下さる方は大歓迎です。遠方でもできるいろんな応援のアイデアを下記までお伝え下さい。 」
 この姿勢は、 上記(1)から(9)の基本原則となる。
 これらの試みに共感し賛同する方々がいればリンクをとりあい、それぞれの地域同士が企画やアイデアを公開しあい、手法を「真似」しあって改善していくことを提唱する。
 福祉援助手法の向上の為にも、コンピューターネットワーク技術の進歩に学び、お互いのノウハウをインターネット上で公開しあい積み上げていく姿勢を持ちたい。 この提言やカトレアホームのホームページの手法は、参考になる部分はどんどん利用してもらい、改善点や疑問、批判などをよせてもらうことを提唱していきたい。
 真に地域に根ざした実践は「真似」しようと思っても、同じようにならないのが面白いところであり、地域地域がその地域独自の固有性を開花させていくだろう。

5、人権擁護システムへの可能性

 プライバシー

 ここで特に、上記の(7)について、人権擁護の視点からみていきます。
 高齢者福祉の現場では当然のような感覚があるのですが、施設の紹介パンフレット等に、利用者の写真が掲載される場合があります。現にカトレアホームのパンフレットにもパンフレット制作当時の利用者の写真が掲載されています。
 しかし、ノーマライゼーションの視点からよくよく考えてみると、アパートの家主やマンションの管理人が住人の食事風景などを撮影し、入居案内のパンフレットを作るでしょうか。そのようなことは一般的に行われていることでしょうか?・・・などと考えると、私も考え込んでしまいます。
 「福祉施設だからいいのだ」などと言ってすましてしまっていいのでしょうか。権利意識の強い有料老人ホーム等では、プロのモデルさんを使ってパンフレットをつくっています。
 施設が発行する広報誌などは、施設理解や地域交流の観点からも広く一般化されているので、簡単に結論づけできませんん。しかし、インターネットは世界に無条件に発信される新しいメディアですから、こんなことも今後の論議が必要となるでしょう。
 そしてここで、あらためて確認しておきたいのは、介護を必要とする人にとって、介護者は大変強い立場にあるという事実です。
 写真の掲載も、「本人の承諾を得た」と言うのは簡単ですが、強い立場の施設職員が写真を載せると言ったとき、利用者が「いやだ」と言うにはずいぶんと勇気がいるでしょう。また障害の形態によっては掲載可否の意志確認をとりにくい場合もあります。
 もちろんインターネット上に個人の私生活を掲載するのは、その人の自由です。しかし、その公開は、あくまで本人の自由な意志が確実に保証されている環境において行われるべきでしょう。
 また、社会福祉法人は措置費という公費で運営されているので、私たち職員は「公権の行使者」だとする見解もあります(*3)。私達職員は公権に基づいて介護をする側にいるのです。公権の行使者が私的生活に深く介入し、利用者の私生活を公表していくのは、やはり慎重な姿勢が求められて当然でしょう。
 私は、自分のおかれた「強い立場」を自覚する者として、インターネット上の利用者本人の写真や私生活に関することの掲載には、慎重な姿勢をとっていきたいと思います。

 施設利用者本人のホームページづくり

 さて、何でも反対では先に進めません。
 施設の地域理解は大切ですが、ではどのようにホームの生活を紹介していけばよいのでしょうか。
 この考えを深めていくうちに、インターネットの面白い可能性に気づきました。
 現在ボランティアさんたちと検討していることのひとつに、ホーム在住者自身のホームページが作れないか、というプランがあります。
 施設利用者もホームページを開設したければ開設できる環境を用意し、もし開設希望者がいれば、その人の視点でホームの生活を紹介する・・・のなら、よいのでは・・・というプランです。
 しかしこれも、実際には施設側が作って、利用者の名前だけを掲載する「やらせ」になりかねない危険性をはらんでいます。
 そこで、施設利用者のホームページを施設職員が補助して作るのではなく、第三者としてのボランティアにその制作補助をしてもらえないか、という提案です。
 またこれを施設のホームページに入力するのではなく、本人と支援ボランティアがパスワードを管理する、施設とは独立した別のホームページを作ることはできないか、ということです。
 もちろん施設のホームページと密接にリンクは取り合います。しかし、その制作内容の独立性の確保が重要です。本人の自由な意志が確実に保証されている環境さえ整えば、ご本人の好きなだけ私生活を公開なさるのも自由なわけです。自分史の編纂など、自分自身をおおらかに開けることはとても幸せなことですから。
 またカトレアホームには、在住者の自治会がありますので、そこでの意見もボランティアによってインターネット上に掲載できないでしょうか。
 これは施設に対する批判などが出てくると、私としては自分で自分の首をしめることになりかねません。しかし、施設も利用者も同じ土俵でものを言い合えることが当たり前なのですから、当然な状態になるだけの話しです。

 施設の経営と運営

 また、このことによって人員の不足等の現実や、現行の予算的基準の不備が社会的に明らかにされていく可能性もあります。
 私の限られた経験からだけですが、現場職員の実践レポートなどをみても、どうも施設職員は人がよく、社会の期待に応えて優等生的にきれい事だけを発表してしまう傾向を感じます。しかしインターネット上では利用者とボランティアがそれを検証できる場所を持てるわけですから、事実をもっと明らかにできる可能性があります。
 もう一つ、従業員の組合問題なども運営者側からは危惧する声が上がりそうですが、社会福祉法人は利潤追求法人ではありませんから、健全で民主的な運営さえしていれば、経営者側はなんら恐れることはないように思うのですが。
 あまりに過激な誹謗中傷は、一般社会と同様にネットワーク上でも無視されるでしょうし、施設側も必要なだけの釈明や反論をインターネット上でできるわけですから、かえって事実理解が深まります。
 社会福祉法人の不祥事が時折報道されますが、これも施設の持つ閉鎖性と自己完結性が温床になっています。ありのままの事実が公にされることは、公金で運営されている施設の健全な運営が確保されるわけですから、利用者、職員、監督官庁側から見てもだれもこまりません。
 都合が悪いのは、不正を行おうとする経営者だけなのですから。

6、今後の課題

 神奈川県レベルでも福祉施設における人権擁護のあり方について、具体的な取り組みが最近やっと話題に登るようになりました。
 談合体質を指摘される日本社会は、たとえオンブズマン制度などが創設されても、一部の人間関係の中で内密に処理される可能性が大きい社会です。この点でインターネット上での異議申し立ては、情報を内密にしておこうとする動きに対して大きな牽制力をもつのではないでしょうか。インターネットを利用した権利擁護システムも、弁護士さん達といっしょに検討をすすめていけたらと思っています。

 定年デビュー(公園デビューに洒落て)

 また、定年後の男性の社会貢献につても今後の課題にしていけたらと思っています。
 豊富な社会経験を持ち、安定したお金と充分な時間をもつ定年退職者は、地域から離れて勤勉に勤めていた人ほど、自分の住む地域での活動の場所がありません。
 そんな方々もパソコンに挑戦しながら、インターネットが地域活動への出会いときっかけ(デビュー)を提供し、定年後の男性の力を福祉に活かしていただけないかという、手前味噌な願いです。(自分の将来の問題でもありますから)

 要介護者の家族

 そしてまた地域福祉の分野になりますが、家庭の中で要介護者を抱えた家族のみなさんも、インターネットの開かれた双方向通信機能を活用できないでしょうか。
 ヘルパー派遣、デイサービスなど在宅支援のサービスは少しずつ整備されてきてはいますが、実際の介護は家族、とりわけ女性に押しつけられているのが現実です。
 ここのところの介護保険の論議の中でも、給付金支給は家庭内に介護を押し込める現状を追認するだけだという危険性が指摘されています。この点も福祉の現場から、その危険性を大いに感じます。
 社会福祉法人がサービス体制を整えようしても、実際には、さまざまな規制や予算面でなかなか整備が進まないのが現実です。この状態での、中途半端な給付金支給は、施設整備の遅れの免罪符になりかねないのです。
 要介護老人を抱える家族の会などがインターネット上に誕生し、介護者は家庭にいながらも家庭介護の実状を発信したり、介護情報を検索したり、オンライン上の家族会を開いたり・・・、そんな活動をつくれないでしょうか。
 カトレアホームは、近い将来茅ヶ崎市内の市街地に地域単独型のデイケアセンターと在宅支援センターの運営を予定しています。介護者の方々への、このような試みも支援していけたらと思っています。

  個が問われる時代へ

 最後に私のかなり直感的な感想ですが、インターネットによるネットワーク環境は、個の拡張の時代をつくると感じています。
 個の拡張とは、個人の意志がバーチャル空間上に存在の場所を得て、その空間内で自己を主張し、個の意志が拡張した状態を築くということです。そこでは、従来のような組織の論理は通用しなくなるのではないでしょうか。
 いままでの世界で個の意志を広げる(拡張する)には、一定の枠組み(組織)の中で地位や権限を得なくては実現できませんでした。これは、一部の人たちのみの特権でもありました。しかしインターネットは、その枠組みを打ち砕くというよりは、スルリと通り抜けてしまうのです。
 バーチャルな世界が地球を被い、バーチャルな世界での合意が、現実の世界を変えていく・・・
 従来の組織や、社会的枠組み、集団の力とは異なった、「個」の力が社会を変革することを可能にする時代が来たような気がしています。(もちろんカリスマ的支配とは違いますが)
 たとえば、福祉の分野においても、いきなり社会全体の問題に取り組もうとすると、既存の枠組みに打ちのめされ無力感に陥ります。しかし、自分の日常の生活の中で困ったこと援助の必要なこと、または、だれかに対して貢献できることを「個」のレベルで発信し、それがつながることさえ出来れば、これは具体的な動きになえます。
 「個」と「個」が、点と点としてつながって面をつくり、社会を動かす力になっていく可能性を感じます。
 もちろん人それぞれ「個」の表現方法は異なります。
 パソコンは大嫌いという人もいて当然です。インターネットだけが全てではありません。しかし、とりわけ社会的に弱い立場にいる個人にとって、インターネットによる「個」の拡張手段は大きな可能性を秘めているように思うのです。
 その点は、またこのホームページを通じた今後のボランティア活動等の実践から、具体的な事柄ともに考えていきたいと思っています。
 長文になりましたが、このページ冒頭に掲載させていただいた村井純さんの言葉を引用して提言を結びます。

 ただひとつだけいえることがある。インターネットは踏み台だということだ。私たちは、地面の上にスノコでも踏み台でもいいから、何か台をつくりたい。それを少しでも高くしたい。そうすれば、それまで一生懸命に飛びついても届かなかったブドウの実に届く。
(*4)


(*1)「今をときめいて 老人介護の発想転換」中田光彦(雲母書房)

(*2)Access Research Group慶応大学アクセス研究会
    MACSALON VCOM末廣ハウス など

(*3)「シリーズ 変貌する家族(6)家族に侵入する社会」副田義也(筑波大学教授・岩波書店)


(*4) 「インターネット宣言 」村井 純(慶応大学助教授・講談社)



 権利関係の提案は少々ラジカルになりましたが、自分に言い聞かせるつもりで原理原則だけは明確にしておきたかったのです。あまりかたっくるしく考えないで、目の前のできることから楽しみながらやっていきたいですね。


 ご意見、ご批判、誤字脱字、用語の間違った用い方など、お気づきの点をお知らせ下さい。(高橋宛)

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